アルデヒドとはアルデヒド基R−CHOをもつ化合物の総称で、第一アルコールが酸化したものである。またアルデヒドは酸化され易くカルボン酸になり易い。ホルムアルデヒドは脂肪族アルデヒド類の最も単純なアルデヒドではあるが、その化学は単純ではない。常温では刺激性の強い気体(融点−117℃、沸点−19.2℃)で、非常に重合しやすいので水溶液(ホルマリン)またはポリマーの状態(パラホルムアルデヒド)で利用されている。工業的にはフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの合成樹脂の原料となっている。
ホルムアルデヒドは水に溶けるとMethylene hydrateと平衝状態になり安定化する。ホルマリンを長期間保存したとき、酸化されてメタノールとギ酸が生成し溶液のpHは低下する。組織化学や電顕用の固定液としてパラホルムアルデヒドHO(CH2O)nHを原料として調整することがある。パラホルムアルデヒドは水には徐々にしか溶けないが、pH7附近の中性の緩衝液には良く溶ける。このようなBuffered Formalinはメタノールとギ酸をふくまないので酵素抗体法では愛用される。
ホルマリン(ホルムアルデヒド)が蛋白質中のアミノ基(NH2)等と反応してヒドロキシルメチル基が生じ、これがさらに他の蛋白質中のアミノ基(NH2)と反応して、蛋白質分子内ないし分子間でメチレン架橋が形成され蛋白質が安定する。ホルマリンによる短時間の固定ではこれらの反応が主に起き生成したメチレン架橋は不安定で固定後の標本作製過程(特に水洗)で加水分解されて元の官能基(アミノ基、他)に戻ることが多い(可逆反応)。しかし、長時間の固定では不可逆的な反応が進行しホルマリン(ホルムアルデヒド)が蛋白質と強く結合する(強固なメチレン架橋)。その結果、色素の結合や浸透が阻害され染色性の低下が生じる原因となる。