染色検討結果 核染色-分別および色出し
染色条件
核染色 : 2倍希釈ギルヘマトキシリンV使用、 染色時間 2分
分別 : 塩酸濃度 0.2%、 0.5%、 1.0%
アルコール濃度 0%、 70%
色出し : 1.5%アンモニア水70%アルコール使用、 1分
流水水洗
左縦列は、色出しが1.5%アンモニア70%アルコール溶液で上段から分別溶液が塩酸アルコールの0.2%、0.5%、1.0%を用いた時の染色です。
下段にいくに従い核の染色態度が薄くなり、細胞質の輪郭が不明瞭になっています。後染色の態度に変化は見られません。
中央縦列は、色出しが左縦列と同様1.5%アンモニア70%アルコール溶液ですが、分別溶液が上段から塩酸水0.2%、0.5%、1.0%を用いた時の染色です。
左縦列上段からみると全体に核染色が薄く、細胞質の輪郭も不明瞭です。
右縦列は、色出しが流水(1分)で上段から分別溶液が塩酸アルコールの0.2%、0.5%、1.0%を用いた時の染色です。
全体に染色が濃く分別されていないような態度で、核染色も核全体が染まっておりクロマチンが濃く不明瞭です。
色出し | 1.5%アンモニア70%アルコール | 1.5%アンモニア70%アルコール | 流水水洗 |
---|---|---|---|
分別 | 0.2%塩酸70%アルコール | 0.2%塩酸水 | 0.2%塩酸70%アルコール |
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0.5%塩酸70%アルコール | 0.5%塩酸水 | 0.5%塩酸70%アルコール | |
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1.0%塩酸70%アルコール | 1.0%塩酸水 | 1.0%塩酸70%アルコール | |
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※推奨する染色条件の標本
核染色の分別
核染色の分別は、塩酸濃度(水素イオン濃度)、分別時間、分別温度、溶媒の水分含有量などで分別力が変化しますが、奨励染色の時間と温度は一定とし塩酸濃度および溶媒の種類による染色結果を観察し、適正化を検討しました。
塩酸濃度を0.2%、0.5%、1.0%と設定し、溶媒には水と70%エタノールを用いて染色態度を検討した結果、塩酸水濃度0.2%、0.5%、1.0%および塩酸アルコール濃度0.5%、1.0%では分別されすぎてしまいます。
1.0%塩酸水>0.5%塩酸水>1.0%塩酸アルコール>0.2%塩酸水≧0.5%塩酸アルコール>0.2%塩酸アルコールの順で核染色が薄くなります。
また、アルコールによる細胞固定は可逆反応のため、長時間にわたり水分に接触すると細胞の膨張する恐れがありますので、アルコール溶液の使用を推奨します。以上の結果より、0.2%塩酸70%アルコールのご使用を推奨します。
(表2)分別液別の分別力
塩酸濃度 | アルコール濃度 | 流水水洗 |
---|---|---|
0.2% | 0% | 強い |
0.5% | 0% | 強すぎ |
1.0% | 0% | 非常に強い |
0.2% | 70% | 最適 |
0.5% | 70% | 強い |
1.0% | 70% | 強すぎ |
核染色の色出し
色出しには、水道水、温水、リン酸緩衝液、弱アルカリ溶液などを用いる方法があります。
水道水は一番手軽ですが、pHの変化、水温の変化、残留塩素濃度などに注意する必要があり、浸漬時間も数分から10分程度かかります。それにより核の膨化が生じる恐れもあります。
温水の場合は、色出し時間の短縮とはなりますが設備が必要となります。
リン酸緩衝液はpHにより浸漬時間が違いますが、浸漬時間は数分程度です。
弱アルカリ溶液は、アルカリの種類により調製後にpHの変化が生じますが、浸漬時間は1分程度となり、1.5%アンモニア水70%アルコールの使用を推奨します。