染色工程
染色工程表(表1)を示します。この工程を基準として、各染色液および分別、色出しなどに用いる試薬濃度や工程時間などについての検討結果を示していきます。
核染色前の親水
95%エタノール固定液から、70~50%に希釈したエタノール溶液を通し、水洗へ。
この操作では細胞の剥離が起こりやすいため、コンタミネーションに注意してださい。
検体種類別に100枚程度の使用で溶液を濾過または新調した方がよいでしょう。
ヘマトキシリン染色液
ギルヘマトキシリンⅤ原液と蒸留水を1:1の等量で混合して使用します。
染色液はコンタミネーションおよび生成光沢膜の除去のため、毎日使用前に濾過をおこないます。
液量が少ない場合には等量混合液を補充します。
分別
0.2%(wt%)の塩酸を含んだ70%エタノール溶液を用います。
塩酸水でも良いのですが分別力が強すぎるので、アルコール溶液の方がコントロールしやすいと思います。
アルコール溶液であっても、塩酸濃度が高くなれば分別力は強くなり、塩酸濃度が同じならば、アルコール濃度が高くなるほど分別力は弱くなります。
溶液は、毎日新しいものと交換します。
色出し
1.5%アンモニア水(wt%)を含んだ70%エタノール溶液を用います。
酸性下での核染色では赤紫色で退色しやすくなるため、水洗や弱アルカリ溶液で中和することにより核は青~青紫色を呈し、安定化します。
しかし、溶液のアルカリ性が強くなることや浸漬時間が長くなるほど、細胞の剥離や膨化が起きやすくなります。
水道水の場合は、季節的な変化で水温や含有塩素濃度などの変動により染色性が変化する場合があるので、色出し時間に注意が必要です。またアルカリ溶液と同様に、長時間水分と接触すると膨化の恐れがあります。
アルカリ溶液は、毎日新しいものと交換します。
表1:染色工程(基準)
染色工程 | 内容 | 時間 | 交換頻度 |
---|---|---|---|
70~50%AL | 親水 | 1分 | 日に何度か交換 |
流水水洗 | 親水 | 1分 | |
ギルヘマトキシリンⅤ (2倍希釈) |
核染色 | 2分 | 毎日染色前に濾過、必要に応じて継ぎ足す |
流水水洗 | 1分 | ||
0.2%塩酸70%AL | 分別 | 1分 | 毎日交換 |
流水水洗 | 1分 | ||
70%AL | 親AL | 1分 | 毎日交換 |
1.5%アンモニア70%AL | 核染色出し | 1分 | 毎日交換 |
70%AL | 脱アルカリ性および脱水 | 1分 | 毎日交換 |
95%AL | 脱アルカリ性および脱水 | 1分 | 毎日交換 |
OG-6 | 細胞質染色1 | 1分 | 約3日で交換 |
95%AL | 分別 | 1分 | 毎日交換 |
95%AL | 1分 | 毎日交換 | |
EA-50 | 細胞質染色2 | 2分 | 約3日で液量の半分を廃棄交換 |
100%AL | 分別および脱水 | 1分 | 毎日1~2層交換し、前にずらす。 |
100%AL | 分別および脱水 | 1分 | 毎日1~2層交換し、前にずらす。 |
100%AL | 分別および脱水 | 1分 | 毎日1~2層交換し、前にずらす。 |
100%AL | 分別および脱水 | 1分 | 毎日1~2層交換し、前にずらす。 |
100%AL | 分別および脱水 | 1分 | 毎日1~2層交換し、前にずらす。 |
Xylen | 透徹 | 1分 | 毎日1~2層交換し、前にずらす。 |
Xylen | 透徹 | 1分 | 毎日1~2層交換し、前にずらす。 |
Xylen | 透徹 | 1分 | 毎日1~2層交換し、前にずらす。 |
封入 | 封入 |
AL:エチルアルコール
☆塩酸アルコール、アンモニアアルコールは、約1ケ月程度の消費サイクルで作り置き